- ホーム
- 投稿記事
- 歯の不調を治したい
- 治療を繰り返している方へ
- 噛み合わせが原因でトラブルを繰り返していた方の...
噛み合わせが原因でトラブルを繰り返していた方の治療例
- 2023.04.04
- 歯の不調を治したい
- 治療を繰り返している方へ
今回ご紹介するケースは、自分の歯を守ろうとたくさんの歯科治療を受けてきたにもかかわらず、トラブルを繰り返していて、歯がきれいにならず、困っている患者様の症例です。
この記事の目次
歯の削れ、歯ぐきの腫れ、歯並びの乱れなどを発症
患者様は60代の女性です。以前、他の歯科医院で治療を受けていましたが、左下の歯を残すことができず、抜歯を試みたものの上手く抜けず、来院されました。「歯をきちんと治したい」「歯がないところに歯を入れたい」というご希望でした。
患者様は気づいていらっしゃいませんでしたが、お口の写真をよく分析すると、以下のことがわかりました。
・右下の歯は、根の部分が感染して歯ぐきが腫れている。
・右上の歯の根元が茶色くなり、傷んでいる。
・下の犬歯(真ん中から3番目の歯)が特に削れている。
・上の前歯の真ん中左の歯も、少し前に飛び出している(こちらは人工物ですが、最初からこのような向きで装着することはない)
・下の前歯の真ん中左の歯が、少し前に飛び出している
実はこれ、すべて噛み合わせが原因です。
患者様は自分の歯を守ろうと一生懸命で、今までたくさんの歯科治療を受けてこられたようです。虫歯を削って詰め物や被せ物を入れたり、保険適用外の高価なセラミックを入れたりしていました。
しかしながら、噛み合わせのルールが守られていなかったためにきちんと機能せず、歯並びまで変化してしまった状態です。
そして、原因となる噛み合わせの治療を受けたことは、残念ながらなかったそうです。正確に言えば、噛み合わせの説明を受けたり、治療の選択肢を提示されたりする機会がなかったのです。
これは特別な事例ではなく、ほとんどの患者様が「噛み合わせについての説明すら受けたことがない」と、おっしゃっています。
では一体、噛み合わせのどこが問題だったのでしょう?
噛み合わせが悪くなった原因とは
詳しい説明を読んでいただく前に、正常な噛み合わせについての記事をご確認ください。
噛み合わせ|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜
正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜
今回の患者様は、以下のような問題点と症状がありました。
<問題点・症状>
・正しい顎関節の位置で噛んでもらうと、一部の歯だけが当たる状態なので、患者様は顎をずらすことで、ある程度全体の歯が当たるようにしていた。(当たる部分に印)
・噛み合わせのズレを解消しようと、くいしばりや歯ぎしりが、強い力で起きやすくなっている。
↓↓
・犬歯が削れる。
・削れた犬歯の働きを、小臼歯より後ろの歯(奥歯)が肩代わりする状況。
・奥歯に負担がかかることで、歯の根元が削れたり、歯が割れたり、歯の根の感染が治りにくくなる。
↓↓
・原因を取り除かない限り、何度も治療を繰り返す。
・噛む力が必要以上に加わることで、歯並びが変化しやすくなり、前歯の位置が目に見えて変わった。
上記のような流れで噛み合わせの状態が悪くなったことが、みてとれるケースでした。
噛み合わせの正常な状態は、簡潔に述べると次の2つがポイントです。
・正しい顎関節の位置で噛んだときに、歯全体で噛めること
・歯ぎしりや咀嚼運動をしたときに、奥歯がこすり合わないこと
今回のケースでは2つとも達成されず、トラブルが繰り返されていました。
以前の歯科医師も一生懸命、1本1本の歯を治してこられたのだと思います。それ自体は悪いことではないと思いますが、気の毒なことに、患者様はこのような全体像や治療の流れを知らされず、部分的な治療の繰り返しを選択されてきました。
まず初期治療、次に噛み合わせの治療へ
では、このようなケースはどのように治せばよいのでしょう。
まず、噛み合わせの臨床理論に則って、歯の模型、歯の写真の分析から、最終的な理想の形のシミュレーションを行います。この手順により正しく治す方向性を確認できるので、間違いが起きません。
歯の模型の写真
歯の模型の写真
歯の写真をもとに分析
理想の歯の形のシミュレーション
治療計画を正しく実現するために、以下のステップで治療を行いました。
初期治療
1.左下のボロボロになっている歯を抜歯し、インプラントを挿入してしっかり噛めるようにする。
2.右下の歯の根の治療。進行すると治りにくくなってしまうため、丁寧に行う。
噛み合わせを整える治療
3.基準となる下の前歯をマウスピース矯正で整え、削れた歯をラミネートする(薄いセラミックを歯の表面に貼り付ける)
4.下の前歯と適切に噛み合うよう、上の前歯の被せ物をつくる。
5.上下の前歯に合わせて、そこに連続的に並ぶよう奥歯の被せ物を作って歯並びを整えていく
噛み合わせ治療後のメンテナンス
今回のケースでは、歯が悪くなってしまった大きな原因は「噛み合わせ」でした。
3ヶ月に一度くらいの頻度で、歯のクリーニングで来院されるのに合わせて、噛み合わせに変化が起きていないかチェックします。
噛み合わせが悪い状態で長く過ごしていた患者様の中には、顎関節の変形が進行していくことがあります。
もちろん、顎関節の変形を可及的に食い止めるための噛み合わせ治療ではありますが、きちんとその目的が果たされているか経過をチェックしていき、必要に応じて、最小限の調整で良い状態が維持されるようにしていきます。
稀に、強い噛む力が異常に強い方、コントロールの効かない歯ぎしりが続く方もいらっしゃるので、そのような方には「ナイトガード」と呼ばれる、寝る時専用のマウスピースをお作りします。
治療事例概要
治療内容:根管治療、マウスピース矯正、補綴治療(インプラント、ラミネート等)
治療期間:1年
治療回数:14回
治療費用:275万円(税込)
主な副作用、リスク
【マウスピース矯正の副作用、リスク】
・矯正用マウスピース装着直後~3日間程度は、軽い痛みや違和感を覚える場合があります。
・矯正用マウスピースは長時間装着(1日18時間以上)していただく必要があります。
※装着時間が短くなると、治療計画通りには歯が動かない可能性があります。
・歯の移動に伴い歯茎が少し退縮したり、多少の歯根吸収が起きる可能性があります。
・かみ合わせや食いしばり、歯ぎしりが強すぎる方は、詰め物や被せ物が割れる可能性があります。
・日々変化するお口の中の状態に合わせて定期的な確認、調整を行わなかった場合、詰め物や被せ物の破損等が起きる可能性があります。
・口腔ケア(歯磨きなど)を怠った場合、虫歯や歯肉炎になる可能性があります。
【インプラントの副作用、リスク】
・知覚過敏、咬合時痛、冷温痛が生じる可能性があります。
・外科処置をおこなった場合は、前者に加えて神経障害や炎症症状、神経治療をした場合には感染や炎症が歯根の先に起こることがあります。
・セラミックや仮歯が破損、脱離することがあります。
・噛み合わせの変化、発音の変化、違和感等が起こることがあります。
・症状の強さの出現には個人差があります。
歯のトラブルがあれば、噛み合わせについても相談しましょう
皆さんも、もし歯のトラブルが続いているようであれば、一度、噛み合わせの問題を疑ってみてください。
そして、現状の噛み合わせの評価、今後起きうる問題のリスクを、ぜひかかりつけの歯科医師に聞いてみてください。皆さんの質問に対して明確な回答を出せる歯科医師かどうかは、皆さんの健康を長く守ってくれるかに、大きく関わります。
分析もないまま「歯を守りたいなら夜間にマウスピースをつければいいですよ」とだけ説明する歯科医師が多いと患者様から伺いますが、そんな先生は要注意です。(そもそも歯科医師が診査せずに、歯科衛生士さんがルーティンのように夜間のマウスピースを勧めている事例もあるようです)
なぜなら、歯は寝ているときだけでなく、24時間使い続けるものなので、夜だけ保護すれば大丈夫という単純な話ではないからです。
事象には必ず原因があります。
原因を改善するからこそ、再発を防げます。
「歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜」を読んでいただくことで、少しでも多くの方の“デンタルIQ”が向上し、自分の健康を自分で守るための役に立つことができれば幸いです。
「治療を繰り返しているのに、なかなか良くならない」「噛み合わせが気になる」「顎に違和感がある」「くいしばりが気になる」などのお悩みがある方は、歯科医師 会田にLINEでご相談ください。
下記ページもご覧ください。
噛み合わせ|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜
正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜
顔の歪み、くいしばりを起こす噛み合わせの治療例|歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜
歯科医師 会田光一