慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例

  • 2022.12.06
  • カラダの不調を整えたい
  • 歯並びをきれいにしたい

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前後の比較アイキャッチ画像8

歯並びは大きく乱れていないが、顎にズレや違和感

患者様は20代後半の女性で、毎日、起床時に左顎に違和感があり、慢性的にこめかみ周囲に頭痛があるとのことでした。ほかの歯科医院に「顎がずれている気がする」と相談したところ、その歯科医師から私へ「噛み合わせに問題がありそうだが、よく分からないので診てほしい」と依頼があり、診ることになりました。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前の画像2

ちなみに、これは珍しいパターンです。そもそも、噛み合わせに問題があるかよく診査されないケースが多い上に、診査してもよく分からないまま治療を済ませ、他院へ紹介しない先生がほとんどだからです。

 患者様にお話を伺ってみると、今までは「歯ぎしりがひどいのでは?」と、度々マウスピースを勧められることはあったものの、面倒なので使わなかったとのこと。そして、過去にワイヤー矯正で歯全体を矯正治療しており、左上の前歯がもともと1本生えていないという特徴もありました。

写真でもわかるように、左側の頬が右側と比べて膨らんでいるように見えます。

 

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前1

 

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前右側3

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前中央4

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前左側5

一見すると歯並びが大きく乱れているわけではないので、問題がないように見えるかもしれません。患者様ご自身も、これまで歯科医院で噛み合わせについて説明を受ける機会は特になく、虫歯治療なども普通に受けていたそうです。

頭痛・顎の疲労感・顔の歪み…原因は、噛み合わせの不調

患者様の頭痛、顎の疲労感、顔の歪みの原因は、すべて”噛み合わせの不調“にありました。

過去の矯正治療がどのような形で仕上がったかはわかりませんが、顎の関節を正しい位置づけにして噛むと、現状では、奥歯の2点が接触する状態でした(下図のグリーンの部分)。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|噛み合わせの図解6

これでは上手く噛めないので、患者様は普段、この位置から顎をずらして、歯全体がある程度当たるように、上下の歯を接触させていました。

この“歯の当たる位置をずらす”という無意識な動作は、「顎を前に出す=口を開ける運動」を強いることになります。「噛む=口を閉じる運動」と「顎を前に出す=口を開ける運動」を同時にしないと、上下の歯がしっくり接触しない状態です。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|顎の筋肉の図7

 

出典:https://www.bitefx.com/

本来、噛むときに使う筋肉は「口を閉じる筋肉」と「口を開ける筋肉」に分けられます。片方が働いているときに、もう片方が休むことによって、バランスを保つという役割分担があります。

この関係性が崩れて、一部の筋肉で働きっぱなしの状態が続いてしまうと、筋肉疲労による違和感、痛み、筋肉肥大による顔の歪みや張りが生まれます。

今回の患者様は、左側の顎の筋肉に、疲労と張りが顕著に現れていました。

私はこれまで多くの患者様を診てきましたが、歯の矯正治療で人為的に歯を動かされた方ほど、問題が顕著になっていることが多い気がします。

噛み合わせの不調は、矯正用マウスピースで治療

治療は、歯の凹凸が全体的に正しい位置で噛み込むように、矯正用マウスピースを用いて歯の位置修正を図りました。その上で、歯ぎしりのようにギリギリする動きをしても、奥歯が強く擦り合わないように調整しました。

写真で見ても、上下の歯がより緊密に当たるようになっているのが分かると思います。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|慢性頭痛、顎の疲労・歪みを引き起こす噛み合わせの治療例|治療前後の比較8

治療で大事なポイントは、治療のスタート位置となる「顎の位置づけ」です。

顎の関節が正しい位置におさまっている状態で、噛み合わせを評価する必要があります。もしスタート位置を間違ってしまうと、すべての治療計画が狂ってしまいます。

位置付づけの方法を簡単に説明すると、患者様が無意識にカチッと噛んだ位置と、顎の骨が関節に正しくはまり込んだ状態が一致しているかを、確認する必要があります。ズレているケースがすべて問題になるわけではないですが、不調や異常の原因になっていることが、とても多いです。

これは、歯科医院選びの大きなポイントの1つにもなります。

噛み合わせについてきちんと学んでいる歯科医師は、診療のときに必ず噛み合わせを確認してくれるはずです。その際に、患者様にただカチカチ、ギリギリさせるのではなく、顎の関節の状態も含めてチェックしてくれているかが、大事なポイントです。

今回の患者様は、歯が正しい接触状態になったため、下の写真のように顔貌が変化しました。

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歯全体で力がバランス良く分散できるようになったため、顔の左側の張りがなくなりました。また、慢性的な頭痛や、起床時の顎の疲労感からも解放されたようです。

歯、顎の関節、噛む筋肉は連携しているので、本来の状態に戻していくことがとても大切です。

噛み合わせ治療後のメンテナンスと予防方法

噛み合わせを良い状態で維持し、再発を防止するためには、大事なポイントが3つあります。

 1.矯正治療をきちんと継続する

矯正治療で見た目がある程度よくなると、自己判断で治療を中断される患者様や、まだきちんと噛めていない状態にもかかわらず治療を終わらせてしまう歯科医師が、一部にいます。

全体でしっくり噛めている感覚がない場合は、これで本当に大丈夫なのか、歯科医師から納得のいく説明を受けましょう。いろいろな事情はあると思いますが、患者様が十分な情報を得ておらず、後々想像していなかった不利益を被ることは、防いでいきたいです。

2.矯正後の後戻り防止

矯正治療直後は歯がずれやすいので、しばらくは、後戻り防止を目的とした透明マウスピースを、夜寝るときだけでなく日中もはめていただきます。

半年程度は日中も装着していただき、使ってもらい、その後は夜寝るときだけ使っていただくことが多いです。できるだけ薄くて耐久性があるマウスピースを使うことで、使用時の不快感を減らすことができます。また、噛み合わせがしっかりできていれば、噛み合う反対側の歯も“抑え”として効いてくれます。

患者様のなかには、歯がきれいに並ぶと満足して、マウスピース装着をサボってしまう方が、どうしても一定数いらっしゃいます。せっかく正しい位置に整えた歯が戻ってしまうのは、非常にもったいないですよね。

3.噛み合わせの定期的なチェック

治療後の状態が、変化なく良い経過を辿っているか、3〜6ヶ月に1回は歯科医院でチェックしていきます。治療後の約半年間は、非常に後戻りしやすい時期なので注意が必要ですが、もし後戻りや変化があっても、わずかな調整で対応できることが多いです。

治療事例概要

治療内容:マウスピース矯正
治療期間:1年1ヶ月
治療回数:6回
治療費用:約88万円(税込)

主な副作用、リスク

・矯正用マウスピース装着直後~3日間程度は、軽い痛みや違和感を覚える場合があります。
・矯正用マウスピースは長時間装着(1日18時間以上)していただく必要があります。
※装着時間が短くなると、治療計画通りには歯が動かない可能性があります。
・歯の移動に伴い歯茎が少し退縮したり、多少の歯根吸収が起きる可能性があります。
・かみ合わせや食いしばり、歯ぎしりが強すぎる方は、詰め物や被せ物が割れる可能性があります。
・日々変化するお口の中の状態に合わせて定期的な確認、調整を行わなかった場合、詰め物や被せ物の破損等が起きる可能性があります。
・口腔ケア(歯磨きなど)を怠った場合、虫歯や歯肉炎になる可能性があります。

顎の関節の状態までしっかり診てくれる歯科医師のもとで治療を

今回ご紹介したケースは、歯の接触状態のわずかなズレが、顔の変形や慢性的な頭痛、疲労感につながっている症例でした。

日々、歯の噛み合わせを診ている歯科医師からすると、ごくありふれた問題ですが、多くの方は症状の原因が噛み合わせにあるとは、気づいていないのではないでしょうか?

特に、過去に矯正治療をしている方ほど要注意です。

人為的に歯を動かしているので、きちんとした噛み合わせができていないと、身体が適応できないようなトラブルを起こすことが多いと感じています。

以前に比べて矯正治療が普及してきたこともあり、最近は私も、他の歯科医院で行われた矯正治療のやり直しを手がけることが多くなりました。今回のように、見た目はそんなに乱れていなくても、実際には噛み合わせが崩れているケースによく遭遇します。

途中でもお伝えしましたが、噛み合わせの診療で、ただカチカチ、ギリギリさせるだけではなく、顎の関節の状態までしっかりチェックしてくれる歯科医師のもとで治療を受けることを、強くお勧めします。

私が直接拝見できない患者様には、同じ理論を勉強した仲間の歯科医師のクリニックをお勧めいたします。「噛み合わせや見た目が気になる」「顎に違和感がある」「頭痛や顎んの疲労感がある」などでお悩みの方は、歯科医師 会田にLINEでご相談ください。

 

下記ページもご覧ください。
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歯科医師 会田光一