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重度の八重歯でもマウスピース矯正で治した治療例
- 2023.09.08
- 歯並びをきれいにしたい
こんにちは、歯科医師の会田です。
患者様と、噛み合わせや矯正治療のお話をしていてよく出るのが、「こんな歯並びでもマウスピースで治せるんですか?」「ワイヤーじゃないと治せないと言われました」という驚きの声です。
結論から申し上げると、ほとんどの歯並び・噛み合わせの問題は、歯科医師の腕次第ですが、マウスピース型の矯正装置で治せます。
今回はそんなケースのひとつ、重度の八重歯の症例をご紹介します。
この記事の目次
「ワイヤー矯正」一択と言われたが…
患者様は18歳の女性で、「八重歯を治したい」というご希望を持っていました。
他院でワイヤー矯正を勧められたものの、見た目が気になって見送っていたそうです。世の中にはまだまだ「矯正治療で歯を抜く場合は、ワイヤーを使わないと難しい」と伝える歯科医院も多いようです。
患者様は、友達がマウスピース型の矯正装置で歯並びの治療をしていたのを見て、ご自身も同じように治せないかと思ったとのこと。
当院で歯の健診をした際に、たまたまそのような話を聞いたので「診査してみて問題なければ、マウスピース矯正は可能ですよ」とお伝えしたところ、喜んでいただけました。実際、問題なく治せる状態だったので、マウスピースを用いて矯正治療をすることになりました。
飛び出た犬歯を入れ込む治療方法
患者様のお口の中を見ると、前から3番目の歯「犬歯」が、外に飛び出ていました。
通常、上下の犬歯が噛み合うことにより、もぐもぐと咀嚼運動をしたときに、下の犬歯が上の犬歯の斜面に沿って動きます。そのおかげで、奥歯同士が擦り合って強い負担がかかることを防いでくれます。このように、犬歯には、他の歯にはない大事な働きがあります。
患者様の訴えは「見た目を改善したい!」でしたが、飛び出た犬歯を噛み合わせに入れ込みつつ見た目を改善するのが、私たち歯科医師の役割です。
(ごく稀に、犬歯を抜いて“なかったことにする”という治療をされる医師もいるようですが…)
では、このはみ出てしまった犬歯を、どのように歯並びに入れ込むか。主に下記の1〜4つの方法があり、それぞれに考えなければいけない点があります。
1.歯並びのアーチを広げてスペースを作る
→歯並びは、その人の骨格の範囲内でしか広げられないので、現実的にどこまで広げられるか調べます。
2.歯と歯の間を少しずつ削ってスペースを作る
→最初から歯の限界量を削るようなプランだと、後から微調整する余裕がなくなるので気を付けます。
3.奥歯から順番に奥へ持っていくことで、前方にスペースを作る
→親知らずが存在するスペースに、歯をもっていける余地があるのか、どの程度の移動が必要なのか調べます。
4.歯を抜いてスペースを作る
→歯を抜けば大きなスペースは作れますが、最終的にそのスペースがきちんと閉じるかによります。
そのほかにも、「もともとの横顔は口元が出ているのか(いわゆる口ゴボ)」「歯の倒れ具合はどうか」など、いろいろな懸念点を考えます。その上で、上記の方法を1つ選ぶか、場合によっては複数組み合わせて治療をします。
マウスピース矯正を成功させる2つのポイント
今回のケースでは、先ほどの1〜3の治療法では十分にスペースが作れなかったので、「4.歯を抜いてスペースを作る」を提案しました。
歯を抜くと一時的に大きなスペースが生じます。ひと昔前は、そのスペースを閉じる作業はマウスピースでは難しい、という考えがありました。しかし今は「A.信頼性のあるメーカーの製品」を「B.正しい使い方を知っている歯科医師が用いる」ことにより、歯を抜く症例でも問題なくマウスピースで矯正できます。
A.信頼性のあるメーカーの製品を選ぶ
マウスピース型の矯正装置を作っているメーカーは現在、ごまんと存在します。その中でも、抜歯矯正のように歯の移動量が多く、難易度が高い矯正を多くこなしているメーカーはほんの一握りです。
抜歯矯正において、マウスピース型矯正装置の使用を検討する際は、歯科医師に事前に次の3つを聞いて、確認しておくことが大事です。
・どこのメーカーか
・そのマウスピースの世界シェアはどのくらいか
・実際に抜歯矯正をしたケースでは、どのように治っているのか
稀に、治療がうまくいった実績のないマウスピースでトライして、歯が動かない、噛み合わせが合わない、など失敗してしまった方もいいらっしゃいます。
私自身も、人に勧められて使った新興のマウスピース型矯正装置を使ったところ、歯が全然動かず、痛い目を見たことがあります。結局、途中から、信頼できる大手メーカーの製品に切り替えざるを得なくなり、大変な目に遭いました。
B、正しい使い方を知っている歯科医師が用いる
これも当たり前のように思うかもしれませんが、 意外と正しく理解されておりません。
矯正装置は、ワイヤーであろうとマウスピースであろうと“道具”です。道具は、使い手によってその能力を十分に発揮できるときもあれば、使い方を知らず本来の力を発揮できないときもあります。
正しい使い方を知っている歯科医師からすれば、「抜歯を伴う矯正がマウスピースでも可能」なことは当たり前でしょう。しかし、正しい使い方を知らない歯科医師からすると「それは難しいので別の方法がよいでしょう」という判断になってしまうのです。
マウスピース型の矯正装置は、設計と補助器具の使い方次第で、ほぼどんな症例にも対応できます。私の場合は、重度の骨格不正のケースでは使いませんが、それも私の力量の問題。何なくこなせる先生も、多くいらっしゃるのだと思います。
ぜひ、ご自身が治療の際に何を優先したいかをよく考えた上で、自分の考えにマッチする歯科医師選びができると良いでしょう。多くの方が考える以上に、マウスピース矯正は汎用性が高いです。
治療経過 マウスピースで歯はしっかり動く
今回の患者様は、マウスピース型の矯正装置を使用するうちに、下記の写真のように歯が変化していきました。
治療前
治療中1
治療中2
あれだけはみ出していた犬歯も、ゴムなどで引っ張らなくても、マウスピースだけの力で十分、歯列におさまりました。
マウスピースを使った矯正で、歯を抜いた場合にしばしば生じる問題は、奥歯が手前に倒れてきてしまうことです。奥歯が倒れてしまうと、しっかり噛ませることが出来なくなってしまいます。今回の症例でも、治療の途中で奥歯が倒れそうになってきたので、ゴム掛けボタンを利用して修正を図りました。
実際これは数年前(2020年頃)に行った治療なので、今の私なら、より倒れ込みが起きないように設計方法を変えると思いますが、当時から、補助器具を使えば問題なく歯を動かせることは確信していました。
歯科医師が持っている治療方法の引き出しが多ければ、ほとんどの患者様のニーズに十分にお応えできます。
治療事例概要
治療内容:マウスピース矯正
治療期間:2.5年
治療回数:12回
治療費用:105万6,000円(税込)
主な副作用・リスク
・矯正用マウスピース装着直後~3日間程度は、軽い痛みや違和感を覚える場合があります。
・矯正用マウスピースは長時間装着(1日18時間以上)していただく必要があります。
※装着時間が短くなると、治療計画通りには歯が動かない可能性があります。
・歯の移動に伴い歯茎が少し退縮したり、多少の歯根吸収が起きる可能性があります。
・かみ合わせや食いしばり、歯ぎしりが強すぎる方は、詰め物や被せ物が割れる可能性があります。
・日々変化するお口の中の状態に合わせて定期的な確認、調整を行わなかった場合、詰め物や被せ物の破損等が起きる可能性があります。
・口腔ケア(歯磨きなど)を怠った場合、虫歯や歯肉炎になる可能性があります。
マウスピース矯正は、スキルのある歯科医師選びがカギ
抜歯を伴う矯正をする際、何も考えずにマウスピース型矯正装置を使うと、噛み合わせはめちゃくちゃになってしまいます。しかし、歯を安全に動かすためのルールに則って順番に歯を動かしていけば、大きな問題が生じることは滅多にありません。
また、矯正治療中は、歯が突然予想外の動きをすることはありません。歯科医師が治療経過をきちんとチェックせず数ヶ月放置してしまうと、トラブルが生じます。そのため、歯が問題なく動いているか、定期的にチェックすることも非常に重要です。
逆に言うと、ルールをしっかり守って治療に取り組むことができれば、安全性は非常に高いです。
私は、最新技術の習得のために、今も定期的に研修を受けています。スキルがあれば、ほとんどのお悩みごとに対応できるからです。
今回のような「歯を抜かないと矯正できない」ケースにおいても、マウスピース型矯正装置を使っての治療が「できる・できない」は、ほぼ担当医によって決まってしまいます。ですから、もしお近くの歯科医院で「できない」と言われてしまっても、マウスピース矯正に力を入れている歯科医院に相談することで、希望が叶うケースも多いと考えられます。
マウスピース型矯正装置をはじめ、歯並び、噛み合わせ、矯正治療全般でお悩みのかたは、歯科医師 会田にLINEでお気軽にご相談ください。
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歯科医師 会田光一