2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」

  • 2023.06.12
  • 歯並びをきれいにしたい

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ作りに必要な「最新インプラント事情」|入れ歯、ブリッジ、インプラントのイメージ画像

 

今年に入ってから、矯正治療の相談件数が増えています。計算したところ、去年の2倍以上にもなります。

私は、外科的な処置が必要ないような、骨格的な不正が小さい方のみを対象に矯正治療をしています。そのため、ここ数年は、ほぼ全症例でマウスピース型の矯正装置を治療に使っています。

現在、マウスピース型の矯正装置に関しては、雨後の筍のごとく、さまざまなシステム・業者が乱立しています。なかには、歯科医師がほとんど関与しないケースや、短期間で歯を削って凸凹を改善することだけを重視しているところなど、「医療としてどうなのか」と、疑問を抱かざるを得ない業者も存在します。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|インビザラインのイメージ画像

私は、マウスピース型矯正装置の老舗「アライン・テクノロジー社(アメリカ)」が手掛ける、1000万人以上の治療実績を誇る世界シェアNo.1(2023年5月現在)の製品「インビザライン」のみを使い続けています。

過去に、他社製品もいくつか試しましたが、予測実現性=シミュレーションにもっとも近い形で歯が動いてくれるという点で、インビザラインを好んで使っています。

2023年現在、最新のマウスピース矯正では、どんなことが出来るのでしょう。今回の記事では、インビザラインがどんな部分で進化しているか、ご紹介します。

1.CTと口腔内のスキャンデータの重ね合わせが可能

歯は骨格の中、つまり顎の骨の中でしか安全に移動できません。無理に動かそうとしても動かないか、顎の骨から飛び出て歯がグラグラの状態になったり、歯ぐきが下がってしまったりするトラブルが起きる可能性があります。

そのため、あらかじめ、骨の状態と治療シミュレーションを重ね合わせて、綿密な治療計画を立てることが必要です。

ところが今までは、CTによる骨の状態を、アライン社公式のシミュレーション上で重ね合わせることができませんでした。歯科医師が頭の中でCTデータと口腔内の情報を重ねて想像したり、他社のシミュレーションソフトで作ったものを参考に、公式シミュレーションをいじったりするなど、やや曖昧な診断をせざるを得ない状況でした。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|以前のインビザラインのシミュレーションシステムによる画像
以前のシミュレーションソフトによる画像

しかし、2023年のシステムアップデートにより、CTによる骨格の3Dデータと、歯並び・噛み合わせの3Dデータを重ね合わせて、治療シミュレーションができるようになりました。

これまでも、歯科医師の経験値などにより、一定のクオリティの治療が提供できていましたが、「曖昧な部分はできるだけなくして、患者様にも安心であることを明確に示したい」という歯科医師たちの悩みが解消されたのです。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|現在のインビザラインのシミュレーションシステムのイメージ画像
現在のシミュレーションシステムによる画像。骨格が一目瞭然

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|インビザラインの最新のシミュレーション画像
動かし方に無理がないか、さまざまな角度から確認できるため、かつて起こっていた「歯が思ったように動かない」という原因は、骨格の見える化によって防げるようになりました

個人的には、次の2点をビジュアルで説明しやすくなったことに、大変メリットを感じています。

◆歯を抜いて前歯を引っ込めたい患者様に対して、現実的にどこまで前歯を動かせるのか
◆歯を抜かずに矯正した場合、顎の骨の中に、無理なく歯を位置付けられるのか

これらを視覚的に示せると、患者様も安心して治療を受けることができます。

さらに、業界全体にもメリットがあります。経験値の少ないドクターでも、このような機能を活用することで、より安全な治療ができようになり、マウスピース矯正によるトラブルが減ります。治療を行う側・治療を受ける側の双方にプラスになることをうれしく思っています。

2.治療後の、笑ったときの見え方もシミュレーションできる

これは、2022年のアップデートで実装された機能です。治療前後での、笑ったときの歯の見え方の変化を、公式シミュレーション上で説明できるようになりました。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|インビザライン使用時の笑ったときの比較画像
笑ったときの比較。患者様は、前歯が出ていることを気にしていましたが、「抜歯後どの程度前歯が下がるのか?」「口元はどのように変化するか?」をイメージできて、安心されました

これまで多くの患者様は、歯並び・噛み合わせのデータを見るだけで、治療後の見た目の変化を想像していたと思います。他社のソフトを組み合わせて患者様に説明していた歯科医院さんもいたと思いますが、公式のシミュレーションソフト上で、パッとお見せできることは大きなメリットです。

多くの患者様が気にされるのは、「結局のところ、矯正治療を受けて、自分の歯の見え方はどう変化するのか?」という問題です。

個人的には、歯を抜かない矯正治療をしたときと、歯を抜く矯正治療をしたときでは、どんな変化があるのかなど、患者様がイメージしにくかった問題を、きちんとビジュアル化できるようになったことに恩恵を感じています。

また、治療計画を立てる際も「もう少しこの部分を引っ込ませたほうが、きれいに見えるだろう」など、見落としがちなポイントを減らせることもメリットです。

3.複数シミュレーションの比較検討も可能

複数の治療パターンを、横並びに比較できるのも、インビザラインのシミュレーションの特徴です。

例えば、前歯の見た目が気になる患者様に、歯科医師が「奥歯まで動かしたほうが、こういうメリットがあります」と説明しても、患者様は「私は前歯の見た目が気になっているので、とにかく早く・安く前歯を治したい!」とおっしゃることが、しばしばあります。

そんな時も、前歯だけ動かしたシミュレーションと、奥歯まで含めて動かしたシミュレーションをお見せすることで、歯を削る量や噛み合わせにどのような違いが生じるかなど、細部まで一緒に確認することができます。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|歯を抜かない矯正のシミュレーション画像
【歯を抜かない矯正のシミュレーション】
全体的にかなり歯を削らないと、前歯を引っ込めることができず、計画に無理があることがわかります

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|歯を抜く矯正のシミュレーション画像
【歯を抜く矯正のシミュレーション】
歯を削る必要がなく、顎の骨の範囲内でしっかりと前歯を引っ込めることができることが、予測されます

たまに「矯正治療で歯の凸凹を改善しようとしたら、余計、出っ歯になった」というトラブルを、患者様から聞くことがあります。多くの場合は、歯科医師が考えている治療後のイメージと、患者様が考えているイメージのズレから、問題が生じているように思います。

患者様が考える治療計画と、プロが考える治療計画の違いをしっかり説明し、納得していただくことが、双方にとって幸せな矯正治療になると私は考えています。

4.お子様の矯正治療にも対応できる

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|インビザラインを使う子どものイメージ画像1

近年、インビザラインはお子様の矯正治療にも力を入れています。

今まで、お子様の矯正治療は「床矯正」と呼ばれる方法が主流でした。拡大床と呼ばれる装置を用いて、歯列の拡大や、顎の成長のサポートを行います。

しかし、拡大床は歯の細かい動きの制御が苦手なため、後からワイヤーで微調整したり、装置の取り扱い状態や、歯の生え変わりの影響で、たびたび装置の修理が生じるところが難点でした。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|拡大床のイメージ画像1
拡大床を使った様子(日本臨床矯正歯科医会

そのような中、インビザラインも多くのデータ集積により、予測実現性の高い拡大が可能になりました。

インビザラインはもともと、細かい歯の動きの制御が得意なので、治療開始から終了まで、インビザラインのみで治療が可能です。そして、アライナー(矯正用マウスピース)は、およそ1週間ごとに交換していくので、装置の修理費など、治療途中で大きな出費が生じることがありません。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|インビザラインを使う子どものイメージ画像2

ほかにもいろいろな特徴がありますが、以上の4点が、特に私が気に入っているポイントです。

「AIで行なっている?」「安価なクリニックがいい?」よくある質問

最後に、みなさんからよく聞かれる質問について回答します。

Q.シミュレーションは、AIで行なっているんですか?

インビザラインの製造元であるアライン社の技術者が、AIの補助を使いながら、叩き台となるシミュレーションを製作しています。

しかし、それをそのまま使うことはありません。そのシミュレーション上で、歯は現実的な動きをするか?、歯を動かす順番は適切か?、噛み合わせは適切か?など、歯科医師が一点一点確認して、修正しています。

私も、修正を加えないことはほぼなく、1本1本の歯をすべて自分で動かして、修正します。そういう意味では、AIはまだ補助的であり、歯科医師のスキルに依る治療方法であるといえます。

歯科医師会田の噛み合わせメディア〜カムシル〜|2023年版!噛み合わせ、見た目も安心して治せる「最新マウスピース矯正」|AIによるインビザラインシミュレーションのイメージ画像
歯1本ずつの角度や移動量、移動方向は、基本的にすべて歯科医師が調整します。ここに、知識と技術の差が現れます

Q.同じインビザラインを使うなら、安価なクリニックがいいですよね?

そうとも限りません。先に回答した内容と一部重複しますが、誰が設計図を描くかで、結果は全然違います。そのため、同じインビザラインを使っていても、設計するドクターのスキルにより仕上がりは異なりますし、費用も変わります。

また、多くの治療数をこなしているドクターには、製作費用の優遇があります。そのため、価格だけ見れば、たくさんの治療を行なっている歯科医院が、比較的安価で提供している傾向にあります。

ただ、安価なところでも、大きな医療法人ほど大勢の歯科医師で数をこなして大きなディスカウントを得ている可能性もあるため、医師1人あたりのインビザラインの経験数は、多いとは限りません。価格と担当医の力量の双方を、見定める必要があります。

進歩するインビザライン、歯科医師の技量で仕上がりに差も

今回は、マウスピース矯正のなかでもっともメジャーな「インビザライン」について解説しました。インビザラインは、ここ数年で飛躍的に進化している分野だと思います。システムの進歩で、ヒューマントラブルは減る傾向にはありますが、まだまだ技術者で差がつくのも現実です。

私個人としては、噛み合わせから見た目の改善まで、医師と患者様の双方にメリットが多い治療なので、とても気に入っています。ぜひ皆様も予備知識をつけて、納得のいく矯正治療に出会ってください。

インビザラインや矯正治療のことでお困りの方は、歯科医師 会田にLINEでご相談ください。

私は多くの患者様を担当させていただいている分、日々、いろいろな質問を受けるので、今後まとめて回答する記事も書いてみようと思います。

こちらもご参照ください。
良質なマウスピース矯正を受けるために知っておくべきこと 〜マウスピース矯正での返金トラブル事件を受けて〜