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「噛み合わせ」と「歯周病」の密接な関係
- 2022.07.27
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この記事の目次
歯が抜ける?実は怖い「歯周病」
歯周病は、細菌感染によって生じる歯の周りの組織の炎症反応です。炎症が続くことにより歯ぐきから血が出たり、歯を支えてくれる骨(歯槽骨)が溶けてしまいます。
歯槽骨が溶ける原因は、歯にへばりつくり細菌のかたまり=プラークです。歯磨きの際に歯ブラシがなかなか細部まで行き届かず、歯と歯ぐきの境目にはプラークが溜まります。プラークの中で増殖する病原菌が、炎症を強く引き起こす元になっていると考えられています。
プラークは粘着性が高く、うがいをする程度では落ちません。さらに取り除かないままでいると石のように硬い「歯石」になります。
歯石は歯に強固にこびりついており、歯ブラシでは落とすことができません。さらに、歯石には軽石のように無数の穴が空いており、“細菌の家”となって、ここから細菌と毒素を持続的に排出するのです。
細菌が増殖して体内に侵入しようとしてくると、身体は細菌を排除するために免疫細胞を動員するため、炎症反応が起きてしまうのです。
最初は歯の周りから少し出血が生じる程度ですが、進行すると膿が出てきたり、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けたりして、最終的に歯を抜かなければいけなくなる場合もあります。ですから、歯周病は非常に怖い病気なのです。
歯周病は歯を失う原因になるだけでなく、さまざまな全身疾患に関連することがわかってきていますが、それについてはまた別の機会にお話したいと思います。
歯周病の予防には、丁寧な歯磨きとフロスの使用が大事なことや、歯科医院で定期的に専門的なクリーニングを受ける必要があることは、徐々に多くの方に知っていただけるようになりました。
しかし、噛み合わせが歯周病に影響するということは、まだあまり知られていないのではないでしょうか?
噛み合わせと歯周病の関係 〜部分的に進行する歯周病〜
歯周病は、歯にプラークが付いたままの状態になり、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)に細菌が広がることで進行します。
その際に、噛み合わせの状態により、歯周病が進行しやすい部位ができてしまうのです。歯周病が部分的に進行しやすい箇所は、噛み合わせの負担が極端にかかる「歯周ポケット」です。
食べ物を噛む際に力が強く加わり、歯が揺さぶられることが多くなると、まるでシャツの袖口がゆるむように歯周ポケットが徐々にゆるみ、周囲の細菌が歯ぐきや歯槽骨の内部に侵入しやすくなると考えられています。これを「咬合性外傷」と呼びます。
咬合性外傷に関する議論は何十年となされているのですが、明確な証明が難しい研究でもあります。
※研究データ:「(Reconsideration of occlusal trauma in the pathogenesis of periodontal diseases. 高橋 慶壮ら 2020年」
正常な噛み合わせでは、前歯と奥歯の役割分担が大事であると、こちらで解説しました。その中で、「奥歯は強い力で横に揺さぶられることに弱い」と書いたのは、咬合性外傷という噛み合わせの問題が生じるからです。
興味深い統計データをご紹介します。
80歳になっても自分の歯を20本以上残すことを目指す「8020運動」の実態調査です。
まず、8020運動全体の調査を見てみます。下記のグラフのとおり自分の歯が20本以上残っている人の割合は年々向上しており、例えば75歳から84歳でも、2016年には半数以上になっています。口腔環境への意識が高くなってきていることが分かります。
「8020(現在歯20本以上)割合の年次推移」(Let’s8020|これまでの8020 より)
いっぽう、2000年に行った東京都文京区の高齢者を対象にした8020達成者の咬合調査の研究では、前歯ではまったく噛まず奥歯だけで噛んでいる「開咬(オープンバイト)」というタイプの人と、前歯が正常に機能できていない「反対咬合(受け口)」というタイプの方の中で、80歳を超えた時点で自分の歯が20本以上残っていた人はいなかったのです。
※統計データ:「Dental Prescale®を用いた8020達成者の咬合調査, 歯科学報, 105(2): 154-162, 2005. 竹内史江, 宮崎晴代, 茂木悦子,」より
前歯でしっかり噛まないことで、奥歯により負担がかかり、早期に歯の状態が悪くなってしまうことが考えられます。
私見も入りますが、この調査が行われた東京都文京区は、全国的にみても歯科の予防意識は高いと考えられます。しかしながら実際問題、噛み合わせや歯並びが悪いと、自分の歯を残すことは難しいのです。
いったん奥歯の状態が悪くなってしまうと、残った歯に次々と負担がかかるため、雪だるま式に歯が悪くなる傾向にあることは歯科医療に携わる者は皆知っています。
歯磨きや、歯科医院での定期クリーニングはもちろん大事ですが、歯を守るためには噛み合わせも大事であることをぜひ知っておいてください。
噛み合わせと歯周病の関係 〜口呼吸〜
噛み合わせに関連する問題として、「口呼吸」があります。口呼吸になりやすい噛み合わせの状態は、2タイプあります。
先ほどの「噛み合わせと歯周病の関係 〜部分的に進行する歯周病〜」にも出てきた、前歯ではまったく噛まず奥歯だけで噛む「開咬(かいこう/オープンバイト)」と、噛んだときに下の歯が隠れてしまう「過蓋咬合(かがいこうごう/ディープバイト)です。
これらのタイプの方は、無意識のうちに口呼吸をしている可能性が高いです。なぜなら、開咬も過蓋咬合も、小さい頃の生活習慣で口呼吸をしていた結果として生じるものだからです。
では、口呼吸はなぜ歯周病を悪化させるのでしょうか?
それは、口が乾燥しやすくなることで、抗菌作用を持つ唾液の働きを妨げてしまい、口の中に歯周病を悪化させる悪玉菌が増えてしまうからです。口呼吸をしている方は、歯磨きで汚れを落としやすい前歯にも歯周病菌の感染が見られることが多いです。
さらに、「噛み合わせと歯周病の関係 〜部分的に進行する歯周病〜」でお話したように噛み合わせの問題を同時に抱えていることが多いので、奥歯など過度な負担がかっている歯は、特に歯周病が進行していることもあります。
噛み合わせ・口呼吸・歯周病という3者の関係、お分かりいただけましたでしょうか。
歯周病は噛み合わせを変化させる!?
歯周病になると歯の周囲の骨(歯槽骨)が溶けます。歯の支えとなる組織が弱ることにより、歯がぐらぐらするだけでなく、歯自体がだんだんと動いていきます。つまり歯の位置が変化していくのです。
歯の位置が変化すると、全体的な噛み合わせが変化していきます。多くの場合は、悪い方向へと変化します。よくあるのは、歯周病で歯の支えが弱ってしまった結果、出っ歯になってくるという現象です。下の前歯に押されて、上の前歯が出っ歯になってしまうケースが見られます。
歯は、根の方向に向かって力が加わる分には、抵抗力があります。しかし全然違う方向に加わる力に対しては弱く、歯がさらに移動してしまいます。
結果として、歯の位置が変化したことで本来の働きができなくなってしまい、正常な噛み合わせの機能を失うのです。
いったん歯が悪くなると、ほかの歯も雪だるま式に悪くなる原因は、こんなところにあります。
歯周病予防には「歯周病菌検査」と「噛み合わせ検査」
歯周病の原因は、「お口の中の細菌」と「噛み合わせ」です。
今現在、歯周病にかかっているかだけではなく、歯周病になるリスクがどこにあるのかを知っておくことは、歯周病を予防する上でも治療する上でも、とても大切です。
私は普段からこのようなことを考え、患者様に歯周病菌検査と噛み合わせ検査を行った上で、一人ひとりに合わせたベストな治療方法の提案を心がけています。
最近の歯周病菌検査は唾液の採取で簡単・安価にできますし、噛み合わせ検査もその場で3D画像をお見せしながら説明できます。お気軽に検査を受けていただけるようになり、利便性も向上しました。
噛み合わせや歯周病などでお悩みの方、お口の健康にご興味がある方は、歯科医師会田にLINEで相談してみませんか。
歯科医師 会田光一