正常な噛み合わせとは

  • 2022.06.16
  • 歯並びをきれいにしたい

模型で噛み合わせを説明する歯科医師会田|正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

「噛み合わせ」を整える第一歩は「知ること」です

今回は基本となる正常な噛み合わせについてご紹介します。

噛み合わせを整えるために、まず最初にすることはなんでしょう。
それは「正しい噛み合わせ」とはどういう状態なのか「知ること」です。
「噛み合わせ」は身体の土台であり、「食べる」「話す」「呼吸する」といった生きる上で重要な働きに関係していますが、「正しい噛み合わせ」の状態について、詳しく説明を聞いたことはあまりないのではないでしょうか。
「正しい噛み合わせ」を「知る」と、ご自身やお子さん、ご家族の「噛み合わせ」のチェックポイントを理解できるようになります。
少し専門的になりますが、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。

そもそも「噛み合わせ」とは、何を指しているのでしょうか。
「噛み合わせ」とは、正確にいうと「上下の歯の接触の仕方」になります。
人の歯は、基本的に頭蓋骨に固定されている上顎に対して、顎関節を中心にして下顎が動くことによって「噛む」という動作が行われています。

模型で噛み合わせを説明するドクター|正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

上下の歯の接触は大きく分けると3つの場面があります。

  • まっすぐカチカチ噛んだときにどのように歯が接触するのか
  • 歯ぎしりをするように左右に動かしたときにどのように接触するのか
  • 食べ物を咀嚼しようとしたときにどのように接触するのか

それぞれの場面で正しい接触の仕方=正しい噛み合わせがあります。

 

「正しい噛み合わせ」のセルフチェックをしてみましょう!

それでは具体的に「正しい噛み合わせ」なのかチェックをしてみましょう。

「正しい噛み合わせ」の基本はこれから説明する2つの状態で歯がどのように動いているのかを見ることがポイントになります。

それぞれ説明していきます。

 

(1)正しい顎の位置でカチッと噛んだとき、全体の歯が均一に接触する

まっすぐカチカチと噛むと、上から下に力がかかります。歯の中でも複数の短い根がある奥歯は垂直的な力に強く、逆に根が細長い前歯は垂直的な力には少し弱めです。そのため、正しい顎の位置で噛んだときに奥歯が支えとなって前歯を守るために、全体が均一に接触することが大切です。

 

(2)ギリギリ歯ぎしりをするような動きや下顎を前に出すような動きのとき、奥歯が強く当たらない

これは顎を前後左右に動かしたときの歯の接触の話です。基本的に奥歯同士は触れ合わず、上下の前歯だけが擦れ合います。実は(1)とは逆に、根が細長い前歯は横揺れには強い抵抗力がありますが、根の短い奥歯は横揺れの力には弱いのです。
歯ぎしりというと、奥歯を噛み締めているイメージを持たれる方も多いかもしれません。私たちの身体にはいたる所に筋力を反射的に調整するセンサーがあります。そのセンサーの作用で、前歯だけで噛んでいる分には歯には強い力が加わりません。強い噛む力が発揮されるのは、あくまでも奥歯が噛んでいるときだけなのです。そのため、前後左右に動かしたときに前歯だけが接触している正しい噛み合わせであれば、歯ぎしりをしても歯が壊れるほどの力は加わらないのです。

 

いかがでしたでしょうか?

「正しい顎の位置でカチッと噛んだとき」と「ギリギリ歯ぎしりをするような動きや下顎を前に出すような動きのとき」、この2つの状態で歯はどのように動いていましたか?

ぜひセルフチェックしてみてくださいね。

 

「正しい噛み合わせ」を実現する4つのポイント

「正しい噛み合わせ」かチェックしてみたけれど、もしかしてうまく噛めていないのかな、そんな風に心配になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「正しい噛み合わせ」を実現するには具体的にはどうしたら良いのでしょうか。

「正しい噛み合わせ」は、「噛み合わせ」を構成している4つの要素ごとにポイントがあります。

 

「噛み合わせ」を構成している要素は下の4つです。

1.顎関節

2.噛む筋肉(咀嚼筋)

3.奥歯

4.前歯

噛み合わせの4つの構成要素|正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

顎の関節を起点として、噛む筋肉が動いて、働きの違う奥歯と前歯が接触し、噛む力を分散したり受け止めるといった具合に連動します。

4つの構成要素がそれぞれどのような状態であれば正しい噛み合わせが実現するのでしょうか。1つずつ説明していきます。

1. 顎関節が健康である

口を開けたり閉めたりするときに、ちょうど蝶番の軸となる部分が顎の関節です。
関節円板(かんせつえんばん)というクッションが下顎の骨の一部の内側と外側に連結していて、スムーズな開閉運動を可能にしてくれています。

正しい噛み合わせとは、この関節円板の位置が非常に重要になります。顎関節の健康を守ってくれるものであり、クッションである関節円板がずれると、「口を開け閉めする時に顎がガクガクと音が鳴る」といったサインが表れます。

関節円板は硬い骨の摩擦を減らすために存在しているので、もし位置がずれたまま放置されてしまうと顎関節の変形を招き、噛み合わせが片側に偏ってしまうような問題が生じます。

特に、成人を過ぎてから口を開け閉めする時の顎の音が気になる方は、進行性の問題が存在している可能性が高いので一度チェックすることをおすすめいたします。

顎が鳴る音は時間とともに気にならなくなることが多いですが、関節円板がずれてしまった原因が解決されない限り顎の関節の変形が進んでしまう可能性があります。

 

2.噛む筋肉が健康である

お口を開けたり閉めたりする行為は咀嚼筋(そしゃくきん)という噛むための筋肉が動くことで可能となります。
お口を開ける筋肉とお口を閉める筋肉は別々に動いており、片方が頑張って縮んでいる時はもう片方が伸びて休んでいます。
交互に働くことで働き過ぎの状態にならないようにするのです。

例えば、お口を閉じた時にどこか一部の歯だけが先に当たってしまい、うまく閉じないので顎をずらして噛む癖があったとしましょう。(実際にはわずかなズレであることが多いので、ほとんどの方が自覚できません。)

その場合、お口を閉じる筋肉と、顎を前にずらす筋肉=お口を開ける筋肉が同時に働くことになるのです。
つまり、働くことと休むことをバランスよく行なっていた筋肉が必要以上に働き続けている状態になってしまうのです。

その結果として、顎の関節の円板の位置がズレてきてしまったり、疲労した筋肉の筋肉痛が頭痛や首や肩の凝りのような症状として表に出てくるのです。

噛み合わせをチェックする時は、左右の筋肉が無理なく協調して使えているかどうかを問診や触診から確認することが大事になります。

 

3. 奥歯がしっかり全体で噛めている

正しい顎の位置で噛んだときに全体が均一に接触すると、奥歯が歯全体を支えてしっかりと守ってくれます。特にこの時に上下の奥歯同士が1対2で噛んでいることが理想です。
つまり、1本の歯に注目したときに相対する2本の歯の間にはまりこんでいるということです。噛む力とはかなり強い力を発揮します。例えばごはんを食べている時は、男性で60-70kg、女性で40-50kg近くもの強い力がかかります。奥歯がお互いに複数の歯で支え合うことで大きな力をうまく分散させて歯を守ることができます。

均等に力が加わらずに一部の歯に負担がかかっているような状態が続くと、顎の関節、筋肉、歯のどこかに無理がきてしまいます。
奥歯がしっかりと全体で噛めているかを見極めるために、噛み合わせをチェックするときは「自分で噛んでください」と患者さんに行ってもらうだけでなく、術者が正しい顎の位置を確認した上で、奥歯の噛み合わせをチェックすることが大事になります。

 

4. 前歯が奥歯を守り、休ませている

まず、カチッと噛んだ時に下の前歯は上の前歯の裏側にあたります。これが基本です。
その上で、ギリギリ歯ぎしりをするような動きや下顎を前に出すような動きのときに、下の前歯が上の前歯の裏側をすべっていきます。その時、基本的に奥歯同士は触れ合わず、上下の前歯だけが擦れ合います。歯の根が細長い前歯は横揺れには強い抵抗力がありますが、根の短い奥歯は横揺れの力には弱いので前歯が奥歯を守ります。

ポイントは、下の前歯が上の前歯の裏側を無理なくすべってくれることです。
無理に下顎の動きを制限してしまうような当たり方をしていると、歯が削れてきてしまったり、上の前歯が出っ歯になるように動いてしまいます。
逆に当たりがゆる過ぎると奥歯同士が擦れ合うことで歯、筋肉、関節に負担がかかります。

過去の研究によると、正しい噛み合わせでは奥歯同士の1日あたりの平均接触時間は20分以内とのことです。
つまり、カチッと噛んだ時に当たっている奥歯は、前歯にうまく制御されて多くの時間休んでいるのです。もちろん、その間は筋肉も休むことができます。

 

「正しい噛み合わせ」で本来の健康を手に入れましょう

笑顔の女の子と家族|正常な噛み合わせとは|歯科医師会田の噛み合わせメディア-カムシル

私たちの身体は、「噛む」というひとつの動作をとってみても、その役目をなるべく長期に渡って果たせるように実に上手くできた連携作業を行なっています。
人間の身体の適応力は素晴らしく、ちょっとした不具合が起こっていたとしても、できる限り他の部分でカバーして対応します。しかし、その無理は長く続くと必ず大きな問題に発展してしまいます。

大きな問題に発展してからでは、治療も長期に渡り、負担もかかります。
噛み合わせについて「正しい状態」を知っておくことは、不具合に対してちょっとした違和感のうちに気づき、早期に対応することを可能にします。
噛み合わせは身体の土台です。噛み合わせが整うと、本来持っている力が発揮されて健康な身体を手に入れることができます。
ぜひあなたにとって「正しい噛み合わせ」を実現させてください。
噛み合わせや歯並びでお悩みの方は、歯科医師会田にLINEで相談してみませんか。

 

歯科医師 会田光一